2018.04.19

英語は苦手、でもアフリカで活動を。会社勤め&NPO活動しながらの学習方法とは

人を動かし、心を通わせるためにも、自分の言葉で話すことが大事

町井恵理さん (NPO法人 AfriMedico 代表)
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「英語はいまだに得意ではない」と話すのは、2015年にNPO法人AfriMedicoを設立し、アフリカに配置薬の仕組みを広める活動をしている町井恵理さん。単語で話すレベルで海外ボランティアに飛び込み、活動をしながら英語力を磨いてきたそうです。アフリカと日本は環境も文化も違う、だからこそ感情を伝えるために、自分の言葉で話す必要があると言います。会社勤めをしながらAfriMedicoを立ち上げ、その活動と並行して英会話学校にも通ったというバイタリティ溢れる町井さんに、NPO活動と英語にまつわるお話をうかがいました。

単語しか出てこない英語レベルでも、情熱だけで海外へ!

現在は、製薬会社に勤務しながら、NPO法人AfriMedicoを立ち上げ、富山県発祥の「置き薬」の仕組みをアフリカに広める活動をしています。海外で活動をしていると言うと「英語がスラスラ話せる」と思われることが多いですが、実際のところ、いまだに英語は得意じゃないんです…。言語習得よりも先にパッションで動いてしまうタイプで、「英語ができないから」という理由で海外に行くのをためらったことはありません。

単語でしか話せないレベルだった学生時代にも、インドのマザーテレサの家で短期のボランティアをしました。このときの経験から「今後も海外でボランティアがしたい」と思っていて、卒業後に製薬会社に入って約6年間勤務した後、青年海外協力隊に参加して西アフリカのニジェール共和国に赴任しました。

英語や現地の言語を話すことができず、コミュニケーションが不自由だったからこそ、相手の表情を読み取る能力が身についたと思います。そうやって自分なりに試行錯誤しながら、少しずつ英語や現地語をブラッシュアップしてきました。私の場合、机に向かって学習するよりも、こうやって実践練習の中で習得していくサバイバルイングリッシュの方が向いているんです。

人の行動を変えられる人になるには?足りていなかったマネジメントスキルと英語力を磨く

青年海外協力隊として2年間ニジェールでマラリアやエイズの啓発活動をしたのですが、活動前に6つの村で120人にアンケート調査をしたところ、マラリアになる原因を正しく答えられたのはたったの20%でした。活動後に同じ調査をしてみると、80%の人が「原因は蚊である」と答えられたんです。

しかし、「じゃあ、マラリアにならないためにはどうすればいいのか?」という質問に答えられた人は少なく、本当に必要なことが伝えられていなかったんですね。この経験から、知識を伝えるだけでなく、行動まで変えてもらう必要があると学びました。

帰国後、再び製薬会社に勤めつつ、人の行動を変えるために必要だと感じたマネジメントを学ぶために経営大学院に通い始めました。そこで「アフリカに置き薬を広める」というアイディアが生まれます。「置き薬」は富山県で江戸時代から300年続く文化ですが、これなら近くに医療機関がないアフリカの奥地でも役立つと感じました。

NPO法人を設立してから、現地スタッフと英語でスムーズに意思疎通するために、もっと自分の語学力を上げなければと思うようになりました。経営大学院を卒業して時間があいたタイミングで2カ月間英会話学校に通い、製薬会社での仕事とNPO法人の活動の合間を縫って、1日3時間英文法と単語の学習をしました。時間に余裕があって、モチベーションが高い時に、ガッと学習するタイプなんです。この期間で、TOEICを100点ほど伸ばすことができました。

その後はコミュニケーションでの英語力を高めるため、海外にいる間は実践の中で英語力を磨き、日本にいる間は2日に1回、朝30分間のレアジョブレッスンでプレゼンの練習などをしてきました。

2017年の9月には、当時9カ月の娘と一緒に、2週間の親子留学でイギリスに行ってきました。そこではLとRの発音を叩き込まれたり、現地の薬剤師さんとお話させてもらったりして、とても面白かったです。「小さい子どもがいるから時間がない」と言って英語学習をあきらめるのではなくて、一緒に英語を学べたらいいなと思っています。一緒に楽しめて、英語力もアップできるやり方を今後も試していきたいです。

海外で活動するのに最低限必要なのは5W1Hを伝えられる英語力

海外で活動するといっても、最初から英語がペラペラである必要はないと思うんです。レベルとしては、5W1Hが伝えられれば、生活ができます。英語だけでなく、アフリカで現地の人とコミュニケーションを取るためにフランス語や現地の言語を学んでいますが、複数の言語を学ぶ中で、最低限知っておくべきポイントが抑えられていればなんとかなると感じます。外国語を使う目的はコミュニケーションを取ることであって、シンプルな文法でも伝えられれば十分じゃないかな、と。

今はGoogle翻訳などの機械翻訳の精度も向上していて、英語を話せるようにならなくてもいいと考える方も多いかもしれません。しかし、私は自分の言葉で伝えることがとても大切だと感じます。自分の感情を乗せて、自分の言葉で伝えるからこそ、想いも伝わるのではないでしょうか。

アフリカと日本では環境も文化も異なりますが、スタッフや現地の人とコミュニケーションを取る中で、人間として基礎的な考え方は同じだと感じるようになりました。そういうことを知れたのは、感情を伝えあうコミュニケーションができたからこそだと思います。現地スタッフも「医療が届いていない地域をなんとかしたい」という想いで同じ目標を目指していて、まったく異なる環境や文化の人と想いを共有できることがとても嬉しいです。

この間、アフリカの奥地にある村の村長さんとリーダーが自発的に集まって会議をしてくれたんですけど、そこで彼らから「医療教育をもっとやりたい」と言ってくれて、とても感動しました。日本の「置き薬」という文化がアフリカの奥地で役立って、さらに現地の人たちが自発的に考えるようになってくれている。今、アフリカではようやく100世帯ほどに置き薬を置くことができましたが、まだ届いていない地域もいっぱいあるので、もっともっと展開していきたいと思います。

Profile

薬剤師。アフリカのニジェール共和国で2 年間医療ボランティアに従事。 現地の経験から医療環境を持続的な仕組みで改善したいと考え、大学院(MBA)の研究を経て2015NPO法人AfriMedico 設立。 2014 年東京都 TOKYO STARTUP GATEWAY 最優秀賞 2016年人間力大賞受賞 2017 Forbes JAPAN 「世界で戦う日本の女性55人」選出 2018年日経ソーシャルビジネスコンテスト 海外支援賞受賞など(152文字)

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