2018.04.9

目先の受験でなく将来のための英語学習を

オンラインとオフラインのブレンディッド授業も実施

英語科 兼 文部科学省事業英語教育推進リーダー 原田貴之さん (学校法人愛知学院 愛知高等学校)
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学校法人愛知学院 愛知高等学校で英語を教えている原田貴之先生は、文科省が育成する英語教育推進リーダーも務めており、私立高校における新しい英語教育の開発・普及活動に励んでいます。普段の授業はオールイングリッシュや発話重視で実施し、さらに2018年1月にはオンライン英会話と、教員による授業や生徒同士のアクティビティなどのオフラインを組み合わせたブレンディッド授業も行うなど、精力的に新しい英語教育に取り組む原田先生。その原点と理由について伺いました。

英語教員なのに英語が話せない かつてのコンプレックスが今の教育の原点に

私は、現在愛知高校で英語科の教員をしており、文部科学省が育成する英語教育推進リーダーの1人としても活動しています。英語教育推進リーダーは、これからの英語教育の手法を模索し、教員対象の研修会を通して、英語4技能を育成するコミュニカティブな英語教育を普及させることが主な役割です。

もともと、大学を卒業して大阪府で英語科の教員をしていました。けれど、恥ずかしながら私は英語がまったく話せなかったのです。私の妻は、英会話学校を運営している企業で働いていたので、ときどきパーティーに招待してもらう機会がありました。そこにいる社員やゲストの方は、妻含めみんな英語を流暢に話せる人ばかり。一方で、私は英語科の教員にもかかわらず喋れず……。英語は好きだったものの、留学経験も無く、受験で高得点を取るための英語や学校で教えるための英語しか身に付けられていなかったからでした。

英語が話せないことをコンプレックスに感じた私は、28歳のときに「自分を変えよう」と、一旦教員を退職してオーストラリアへ大学院留学することを決意しました。英語が話せるようになりたいという思いはもちろんのこと、英語教育についても真剣に勉強したいと思っていたので、両方の目標を叶えようとTESOL(英語教授法)の学位取得を目指したのです。この時、妻も一緒にオーストラリアに来てくれ、現地で働きながら私を支えてくれたんです。この恩は忘れられませんね。
毎日必死に勉強して、無事に取得し帰国したときには、世間的にも英語教育への熱が今まで以上に盛り上がっていたため、早速学んだことを現場で実践しようと、愛知高校で英語を教え始めました。

しかし間もなく、私が考える理想の英語と実際のニーズにギャップがあることに気付くことになります。私は生徒たちに対して、将来的に英語を話せるようになって世界へ目を向けられるようになってほしいという思いを持っていて、そのきっかけを授業の中で与えたいと思っていました。一方で、大学受験に照準を合わせた内容を教わること・教わることに対するニーズは、以前と変わらずにあったのです。
しかしながら、教育方法を模索していたタイミングで、大学入試における英語教科の内容変更が決まるなど、教育改革の大きな波が訪れました。私にとっては願ってもいない波です。この変化に後押しされる形で、新しい英語教育プログラムの開発に取り組もうと、改めて決意しました。

ICTを用いた学習の普及には壁がつきもの、それでも前進するしかない


新しい英語教育手法の1つとして導入したのが、オンライン英会話です。英語教育推進リーダーの中央研修で、聖光学院の佐藤先生に取り組みを聞いて魅力を感じたのがきっかけでした。ちょうど本校には、LL教室というヘッドセットや録音機材が備え付けられた英語科用の部屋ができたところでした。せっかくの場所を活かすためにもいい機会だと思い、サービス選定や導入準備を行って、2017年の5月から週1回放課後にクラスを開講してオンライン英会話を実施しています。

オンライン英会話の導入を考える学校の多くがぶつかるのが、どのように他の先生方や生徒たちに必要性を理解してもらうか、という壁です。当校の場合も、機械やネットワークに対する不安や、教員間でのオンラインに対する温度差など、壁はありました。
大学入試の内容が変わるので、「これまで通りの授業ではいけない」と危機感を持っている先生はたくさんいます。しかし、これまで馴染みの無いICTを活用した英語学習には、やはり抵抗はありますよね。普段の授業やテストの準備だけでも手一杯であるにもかかわらず、さらに新しい分野を学ぼうとすると、それだけでかなり負担になるからです。

けれど、「協力したい」と言ってくれている先生もいますし、始めた以上は前進していくしかありません!成果が出て認知が広がれば、今は週1回しか開講できていないレッスンを毎日開くことができるかもしれない。そうなると、多くの生徒に機会提供ができますよね。オンライン英会話はこれからの時代の流れに沿った学習法だと思うからこそ、まずは受けてもらった生徒に楽しみながら学んでもらって、その姿を見た他の生徒に刺激を与えながら広がっていければと思います。

レアジョブと共同でオンライン×オフラインのブレンディッドプログラムを実施


オンライン学習の発展版として、レアジョブと共同でオンラインとオフラインのブレンディッドプログラム開発にも取り組みました。プログラムは、生徒たちの身近な話題である「大学入学前のギャップイヤー」をテーマに、マインドマップを使って自分の考えを整理・表現し、オンライン英会話の講師に対して英語で発表してもらうというものです。期間は2日間、対象は高校1・2年生の希望者13名でした。
初日は、まずマインドマップの使い方について私からレクチャーし、ギャップイヤーをテーマにした英文記事を読んだ後に、オンライン英会話のレッスンを行います。レッスンでは、オンライン英会話の講師から内容の理解度を問う質問を投げ掛けてもらい、それに答えさせました。さらにいくつかのアクティビティを挟み、2日目もオンラインとオフラインを組み合わせたアクティビティを行い、最後に、オンライン英会話を使って外国人講師へプレゼンテーションを行って講師からの質問に生徒が返答をする対話形式の学習を行いました。

2日間、英語を使う機会の多い、なかなか濃いプログラムでしたが、生徒たちはそれほど抵抗無く付いてきてくれたと思います。というのも、参加した学生の一部も受けている「コミュニケーション英語」という授業で、普段私は、〝オールイングリッシュ〟と〝生徒にたくさん発話してもらう〟ことに重点を置いて行っているからです。スモールトークから始まって、教科書の内容に関するQ&Aの受け答えをしたり、ストーリーテリングやサマリーを話したりして、最終的には「自分はどう思うのか、自分ならどうするか」と意見を言ってもらう授業なのですが、今回のブレンディッド授業と通じる部分も多くあります。

また、主に文法を中心に教えられることの多い「英語表現」という授業では、エッセイライティングをよく実施しています。最初は50ワードから始まって、徐々に使ってほしいワード数を増やしていき、今は100〜120ワードを使った英文を15分くらいで書かせています。もちろん文法の学習も大事ですが、先にルールから教えるのではなく、実際に英文を作ったり英語を話したりしながら文法を学ぶ方がきっと身に付くと思うからです。こうした授業に慣れている生徒は、楽しんでブレンディッドプログラムに取り組めたようでした。

今回初めてブレンディッドプログラムを実施してみて、事前インプットの必要性を実感しました。これまではオンライン英会話を行う際も、機会を与えるだけで教材に頼りきり、生徒に任せきりなところがありました。けれど、たとえば「必ず出てくる英単語の意味を先に教えておく」「テーマに対するバックグラウンドを与えておく」ことを行った上でオンラインレッスンに臨むことで、生徒は「習ったあの単語が出てきた!」「実際にこのフレーズが使えた!」という成功体験ができて、より覚えたことが定着するのではないかと思うのです。これこそが、オンライン学習の効果を増すためにオフライン学習でできることなのかもしれません。

まずは、先生に楽しんで英語を教えてもらいたい


英語は、受験のためのツールではなく世界に目を向けるためのツールだと思います。英語が話せることで日本人以外の人ともコミュニケーションを取ることができるし、さまざまな情報を知ることができて、世界で起きていることが身近に感じられるようになるからです。私は、生徒に広い視野を持ってほしいと思いながら、英語を教えています。こうした理想があるから、多少教える負担が増えても頑張れるのだと思います。自分自身も、一歩踏み出してやってみたら、楽しいじゃん!と感じられましたから

同じ英語科の先生方に問いたいのは、「自分自身が英語の授業を楽しんでいますか?」ということです。きっと、英語を学ぶことや話すことが好きだから英語科の先生になったはず。私たちが楽しく教えることができれば、英語を好きになる生徒も増えると思うんです。
私は、年齢も重ねて経験も積んできたので、その中で得たことや教えられることは、引き出しとして他の先生方にも提供していければと思っています。

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