聖光学院中学校高等学校は、1958年に設立されたカトリック系の男子校。毎年東京大学に70名前後の合格者を出す進学校として知られる同校ですが、昨年は1名の生徒がアメリカの名門大学に合格するなど、進路の選択肢は海外へも広がりつつあります。レアジョブのオンライン英会話は2017年4月から導入され、高校1年生が必修科目として受講しているほか、帰国子女を始めとする他学年の希望者や有志の先生方もレッスンを受けていらっしゃいます。
「言葉の壁」は言い訳にならない時代に
私も6月から生徒と同じオンラインレッスンを始めたのですが、今日まで一日も欠かすことなく受講を続けています。モバイルルーターを持っているので、公園でも、役所のロビーでも、キャンプ場のパーキングでも、やろうと思えば出来ますからね。レッスン後は、その日に学んだ表現をノートに書き込んでいるんです。挫折しないように、敢えてちょっといいノートも買ったんですよ。
私は学生時代、特に英語を熱心に勉強したことはありませんでしたし、大学でも社会科の教員になってからも、特に困ることはありませんでした。でも今の学生は違います。英語を話せるということは、かつての「読み書きそろばん」と同じ、基盤の能力。現在の中高生が社会人となるころには、AI(人工知能)が人間に代わって多くの役割を果たすようになると言われていますが、そういう中で自分の能力をアピールし、ポジションを確立していくためには、世界中の人と協力したり競争したりしながら、したたかに生き抜いていかなければなりません。「言語の壁」だとか「国民性の違い」なんてことは言っていられなくなるんです。
日本は人口が減ろうが、経済規模が小さくなろうが、世界の中ではまだまだ先進国。経済的な優位性も、持っています。だからある程度の教育を受けた人であれば海外で学んだり、仕事をしたりする機会を得られますが、他の国、特に発展途上国から世界に出てくる人というのは、その国で飛び抜けて優秀なエリートばかり。能力もあるし、自信もある。そういう人たちと対等に勝負をするためにも、英語力は必須と言えるでしょう。
人任せにできないのがマンツーマンの良さ
授業にオンライン英会話を取り入れたのは、生徒全員に「話さざるを得ない」環境を与える必要があると思ったからです。当校の英会話の授業は、クラスを半分に分けて行ってはいますが、やはり先生1人に対し生徒20数人という感じ。出来る人に任せておけばいいと思っている生徒は、一言も話さなくても授業をやり過ごせてしまいます。でもマンツーマンならそうはいかないでしょう? 導入にあたっては、保護者の方にも説明を行いましたが、反対意見は出ませんでした。社会へ出たときに英語力が求められる場面がいかに多いかを、保護者のみなさんも痛感していらっしゃるんです。
ホストファミリーからの嬉しい報告
生徒の英会話力の変化を正確に検証するのは難しいですが、導入から5カ月程たった今、毎年当校の中学3年生を受け入れてくれているカナダのホストファミリーからは、「今年の生徒は、英語力が高い」というフィードバックをもらいました。今年の中学3年生は、去年1年間オンライン英会話を受講している学年。効果は出始めているのだと思います。
私が生徒に身に付けてほしいのは、プレゼンテーションをできる英語力。英語を話せるようになることではなく、英語で発表できることを目標にしてほしいですね。テストでいい点数を取るために覚えた内容は、テストが終わったら忘れてしまいますが、プレゼンテーションで伝えたいことがある場合は、どうすれば相手に分かりやすいか、正確に理解してもらえるか、一生懸命考えて工夫するでしょう? これがいい勉強になるんですよ。
昨年の卒業生1名が アメリカの名門大へ進学
昨年の卒業生から1名がコネチカット州のWesleyan Universityへ進学したことは、当校にとって非常に大きな出来事でした。この大学はリベラルアーツ系の名門校。この生徒は帰国子女ではありませんでしたが、併願していた京都大学にも合格しました。よく海外の大学を目指す場合の勉強と日本の大学を目指す場合の勉強は違うという話を聞きますが、私はそうではないと思います。海外の大学には一斉入試がありませんから、日頃から勉強を頑張って、すべての科目でいい成績を取らなければなりません。だから結果、東大、京大に受かるレベルの力も身に付くんです。今後、スピーキング力が伸びてTOEFLなどのスコアも上がれば、このような併願を希望する生徒は、もっと増えるのではないでしょうか。
当校では毎年、シリコンバレーでの研修を行っていて、参加者は現地の企業やUCバークレー、スタンフォード、ミネルバ大学などの大学を見学しています。実際に自分たちの目で海外を見るという体験は、子どもたちの意識を大きく変えますね。そういう意味でも、これからの世代はもっともっと外へ出ていかないと。相手に譲る精神は日本人の美徳かもしれませんが、世界では手を挙げてでも前へ出ていく積極性が求められます。生徒には自分の意見や能力を世界で堂々と表現出来る人になってほしいというのが、私の願いです。
――どうもありがとうございました。
聖光学院は、理数系に重点を置いた教育を行う文科省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定されており、今年の秋には代表者がマレーシアやシンガポールで行われるワークショップに参加するそうです。現地で行うプレゼンテーションは、まさに英語での発信力をいかす絶好のチャンス!私たちも陰ながら応援させていただきます。