2017.09.13

絶対導入すべきだと声を大にして言いたい

「英会話は怖くない!」という自信を培ってほしい

池田佑介さん (淑徳与野中学・高等学校)
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埼玉県さいたま市にある淑徳与野中学・高等学校は、中高一貫教育を提供する私立の女子校です。卒業生の90%以上が現役で四年制大学に合格する進学校として知られる同校では、2017年4月から中学2年生の英語の授業に、週1回のオンライン英会話を導入しました。4技能型の英語検定試験の採用が進む大学入試を見すえた、話す・聞く力を伸ばすための一環であるこの取り組みは、授業で使っている教科書の学習内容に沿った形でレッスンが進められています。Z会の英語の教科書『NEW TREASURE ENGLISH SERIES』に準拠した、新たなオンライン英会話サービス「NEW TREASURE Online Speaking」の導入に尽力された同校の英語科教諭、池田佑介先生に話を伺いました。

—オンライン英会話導入前の英語の授業はどんなものだったのでしょうか?
池田先生:現在も基本的には同じなのですが、淑徳与野中学校の英語では1〜3年生までα、β、γという3つの種類の授業を行っています。αは読む、聞く、書く、話すという4技能を網羅した総合英語、βは基礎文法、γは英語ネイティブ講師によるコミュニケーションの授業です。英語の授業数は3学年とも週6回。α、β、γの時間数は学年によって異なりますが、中2の場合はαが3時間、βが2時間、γが1時間となっています。

—充実したカリキュラムのようにお見受けしますが、何か課題や悩みがあったのでしょうか?
池田先生:1クラス生徒40人対教師1人では、できることに限りがあります。1対1でやりとりする時間はまず取れないし、1人が発話できる時間も少ない。生徒が2人1組になってペアワークをすれば十分な発話時間が取れるといいますが、気心の知れた同級生間では、初対面の人と英語で話すといった心理的なバリアを乗り越える経験もできません。コミュニケーション、スピーキングの観点から考えても、ペアワークでは期待できる効果に限りがあるという思いがありました。

教科書に準拠したオンライン英会話

—そこでオンライン英会話を導入されたのですね。きっかけは?
池田先生:本校では、Z会の4技能対応の英語教科書『NEW TREASURE』を使用しています。実は私が以前教えていた別の学校でも『NEW TREASURE』を使っていて、Z会の担当者から「うちの教科書に準拠したオンライン英会話サービス*ができる」という話を、数年前から聞いていたんです。スピーキングに関しては、日本語がわからない英語ネイティブ、または外国人の先生と1対1でやるのが一番だと思っていたので、最初からずっと興味がありました。2017年4月からサービス開始になるという話を2016年10月ごろに聞いて、本校でも何とかサービス開始と同時に始められるようにと準備を進めました。

*『NEW TREASURE ENGLISH SERIES』を出版する株式会社Z会は、2016年2月から、株式会社レアジョブと英語教育サービスの共同開発を行っている。その一環として2017年4月から開講となったのが、オンライン英会話サービス「NEW TREASURE Online Speaking」である。

導入の可否はトライアルで。ICT環境は微調整のみ

—導入に向けてどう準備をされていったのですか?
池田先生:大学入試が4技能化に進んでいく中で、まず生徒たちのスピーキング力が不足している。また今後、スピーキング力がますます必要になってくるという世の中の流れもある。そういった共通認識が学校全体としてありました。そのため、管理職に英語科の教員がいないという現状にありながら、オンライン英会話という新しい授業形態の提案に対しては、非常に前向きな反応が最初から得られました。

導入の可否を決定するためには、昨年末に2度ほど、トライアルでオンライン英会話を実施しました。最初は英語好きの生徒を選抜して大好評でしたが、校長からの指示で英語が苦手な生徒を対象にしたトライアルも行ったんです。 終わってみると「思ったより楽しかった」「意外と話せたし、通じた」など、肯定的な感想が多かったですね。
トライアルを見学に来た教員からも高評価が得られて、導入が決定しました。

—導入に際しては、学校のICT環境を補完するなどの対応が必要でしたか?
池田先生:2年生は3クラスで、合計120名の生徒がオンライン英会話を受ける準備が必要でした。昨年実施したトライアルでは、学校のネットワーク環境も当然チェックしましたが、1クラス40人を一度につなげるのは厳しかったため、20人ずつに分けて受講させることにしました。ただし、ネットワーク環境は既存のままで、契約を変えたりはしていません。現在使用している端末のSurfaceはすべて、もともとあったものです。新たに購入したのは、ヘッドセットくらいです。

ただし、4月にいざ始めてみると、高校の授業でも同時にネットを使っていた影響から速度が遅い、つながらないといった想定外の状況も出てきました。それらの問題には、時間や場所を変えるなどして対処しました。また当初は、音が聞こえない、動画が突然切れてしまうといったトラブルもありましたが、開始から3カ月が経過した7月時点では軌道に乗っており、大きな問題は生じなくなっています。

クラスを半分に分け、15分レッスンを交代で受講

—オンライン英会話が、実際にどう実施されているのか教えてください。
池田先生:オンライン英会話は、コミュニケーションの授業である週1のγの中に組み込まれています。クラス半分がネイティブの先生の授業を教室で受けている間、残り半分は別室で15分間、オンライン英会話を受講します。15分のレッスンが終了すると、教室を入れ替わって交代するという流れです。

既存の授業の中に組み込むことで、英語のカリキュラムを大幅に変えることなく実施ができています。フィリピン人講師の確保、パソコンの手配・準備などは1度にやってしまったほうが便利なので、2年生の3クラスともすべて金曜日に行っています。日頃使用している『NEW TREASURE』の内容と進度に完全準拠したレッスンシートと呼ばれる教材を使ってオンライン英会話を行うため、学びの親和性も高くなっています。

笑いの絶えないレッスンで、英会話への自信が芽生えてきた!

—生徒様の反応はいかがですか?
池田先生:底抜けに明るいフィリピン人の先生とのレッスンを、とても楽しんでいますね。生徒が大声で笑いながらやりとりしている姿を見るにつけ、「やってよかった」と心の底から思います。

—オンライン英会話を始めて3カ月が過ぎ、生徒様に何か変化が見られますか
池田先生:最初のころに比べると、講師と1対1でやりとりすることにだいぶ自信がついてきました。日本では、日常生活で英語に頻繁に触れるといった機会はまだ少なく、英語を話すことに対して自信を持てる環境にないのが実情です。また特に進学校は、「試験で結果を出す」という使命が顕著なため、「間違えてもいいからどんどんやろう」というマインドセットに切り替えるのが苦手な傾向にあります。結果として、力はあるのに、話すこと、表現することに対して自信がない子が多かった。オンライン英会話は、日本語のわからない外国人の先生と1対1でレッスンをするわけですから、話さざるを得ない環境に放り込まれます。ある意味大きなプレッシャーですが、そんな環境の中でも話せる・わかる・楽しいといった経験ができ、回を重ねるごとに自信が深まっています。

教科書では習わない表現も学べ、インプットにも絶大な効果が!

—オンライン英会話をやってみて印象に残っていることはありますか?
池田先生:レッスンシートの中に吹き出しが使われているのですが、この吹き出しを英語ではbubbleと言います。「泡」という意味で覚えているbubbleに吹き出しという意味もあるというのは、レッスンで先生に「bubbleの中のセンテンスを読んで」と言われて初めてわかるわけです。今では、私が教える授業でも吹き出しという意味でbubbleを使っています。

こんな例からもわかるように、外国人の先生と学習者という1対1のレッスンは、同級生同士のペアワークと比べると、インプットの面でメリットが非常に大きくなります。先生が言った単語やフレーズをそのまま、「この場面でこう使うのか」と覚えていけるのです。bubble=吹き出しといったような、教科書には載っていないけれど、実生活ではよく使う言葉や表現を先生とのやり取りで自然に身に付けることができるのです。

—1レッスン15分という時間については?
池田先生:15分はあっという間です。ですから、レッスンシートを飛ばし飛ばしでやっていくことになります。もっと長くしてあげたいとも思いますが、中には全部を15分かからずに終える生徒もいます。課題が終わったらフリートークしていいことになっているので、それを楽しみに集中して受講する生徒もいます。

先生が英語ネイティブでなくても構わない理由とは?

—ネイティブではない、フィリピン人の先生が英語を教えることについては?
池田先生:今は誰もが英語を話すような時代です。潜在的な英語話者は非ネイティブの方がずっと多いでしょう。あくまで英語は誰かとコミュニケーションするための手段です。高いレベルで使えれば講師の国籍は問いませんし、その方がより実用に即しているとも思います。実際、多くのフィリピン人が実用レベルで英語が使えます。ただし、先生の話す英語の訛りが強すぎると、初学者が学ぶ上で障害になると思ったので、複数の講師の英語を事前に聞きました。非常に聞き取りやすく、また指導法もよく研修されており問題はないと判断しました。もしネイティブ信仰のようなものを持っている人がいるとしたら、それらを打ち破る機会にもなると考えています。

—池田先生は、オンライン英会話が実施される教室で監督をされています。
技術的な問題が発生した際のヘルプのほかに、どんなことをされているのですか?
池田先生:保護者にレッスンの様子を還元できるように観察するのはもちろん、15分というレッスン時間の正確な確保や高い品質を維持するための講師へのリクエストを、レッスン中オンラインでつながっているヘルプサポートの担当者に伝えたりしています。

—オンライン英会話にかかる費用を教えてください。
池田先生:週1回、年間26回のオンライン英会話にかかる費用は1回800円※で、全額生徒負担となります。保護者の方からも賛同は得られており、料金が高い、不要といった声は一切出ていません。

究極の目標は、1対1のレッスンからグループ・ディスカッションへの移行

—今後の展開はどのようにお考えですか?
池田先生:来年以降「NEW TREASURE Online Speaking」はほかの学年、そして高校にも導入していきたいです。今の2年生には、まずはオンライン英会話を1年きっちり続けながら、中2としてふさわしい英語力を身につけていってほしいです。その積み重ねを経てレベルアップし、高校へ進学後は、1対1のレッスンからグループでのディスカッションのレッスンに変えていけたらと思っています。オンライン英会話で使用するweb会議システムのappear.in**(アピアイン)は、2人以上でもつながることができるのです。将来的には、たとえばフィリピンの大学生とお互いの国が抱える課題をシェアして、一緒に何ができるか考えるところまで昇華させていけたらと考えています。

**通常のオンライン英会話はSkype利用が主流だが、「NEW TREASURE Online Speaking」は、アプリのインストールやログインが不要のweb会議システムのappear.inを使用。appear.inのサイト上トップ画面で会議の名前を入力しstartをクリックすると、ルームが作成され接続される。通話したい相手に作成したURLを知らせ相手がルームに入れば、通話がすぐ開始できる。

オンライン英会話は、日本の英語教育にぴったり!

—最後に、オンライン英会話の導入を検討されている英語教師の方々に向けてメッセージをお願いします。
池田先生:絶対導入すべきだと、声を大にして言いたいです。スピーキングとリスニングは表裏一体なので、コミュニケーションしながら伸ばしたいのであれば絶対に1対1、それもネイティブないし外国人講師に頼るのがベストではないでしょうか。しっかりと時間を確保できれば、日本人教師は文法をきちっと教えたり、読解問題の指導に充てたりすることができます。日本人教師が何もかもやらなければならないとなると混沌としがちですが、オンライン英会話を導入することで棲み分けができます。すると、システマチックにうまく回していけるようになります。

オンライン英会話は、今の日本の英語教育にとても組み込みやすいものです。生身のネイティブ講師を生徒の人数分だけ確保することは現実的にあり得ませんが、オンライン英会話を使えば1対1を実現できます。そういう意味では、もっと広がっていってほしいです。数年後には当たり前の時代が来るといいなと思っています。

※教材によりレッスンの単価は異なります。

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