2017.08.23

「オンライン英会話」という授業を作る理由

国際バカロレアコース新設、インター校開校に備え 生徒も教師も英語力を強化

荒木貴之さん (学校法人武蔵野大学 千代田女学園中学校・高等学校)
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2018年度に「武蔵野大学付属千代田高等学院」として生まれ変わる、千代田女学園高等学校。日英の2か国語で授業を行う国際バカロレアコースの新設、同じ千代田キャンパス内のインターナショナルスクール開校など、同校の英語教育は来年度から内容面でも環境面でも大きく変化します。
今年から導入を開始したオンライン英会話は、現在、グローバルリーダーコースの高校1年生と2年生、有志の先生方が受講しています。この日のインタビューでは、同校校長の荒木貴之先生にオンライン英会話を授業に取り入れたきっかけや英語教育への思いなどをうかがいました。

先生の頑張る姿が生徒に刺激

オンライン英会話を授業に導入して約2カ月。生徒はみんな楽しそうにやっていますよ。ちょうどグローバルリーダーコースの高校2年生は、7月中旬から約3カ月間、ニュージーランドの家庭にホームステイをしながら現地校に通う「ターム留学」を控えていて、そのいい下準備にもなっていると思います。

先生方は、生徒より一足早くオンライン英会話を始めました。来年度から国際バカロレアコースを新設するので、先生方も英語の資料を読んだり、日本語と英語で行われるワークショップに参加したり、英語を使う機会は確実に増えていくだろう、と。「やる気のある先生はどうぞ」と声をかけたんです。そしたら数十名の先生が手を挙げてくれて、ある先生は朝6:40に来て、7時から25分間レッスンを受けるようになったんです。50代後半の数学の先生ですよ。この姿には、私を始め周りの先生方もものすごく刺激を受けましたし、先生が頑張っている姿を見せることは、生徒にもいい影響を与えていると思います。

スピーキング世界最下位という日本の現状

オンライン英会話を授業に取り入れたきっかけの一つは、先ほどお話したように学校が来年度から新体制になること、もう一つの大きな目的はグローバルリーダーコースに通う生徒の英語力アップです。

去年のTOEFL Juniorの結果などを見ると、生徒の英語力にはかなりのバラつきがありました。TOEFLの試験では、長い英文を聞いてから、問題を解かなければなりませんが、耳に入って来た英語を聞きながら理解する力というのは、通常の一斉授業ではなかなか育てられないんです。

また、英語の瞬発力、とでも言うのでしょうか。言われたことにすぐ返せる力はコミュニケーションに必須ですが、これもなかなか今の教育では育てることができません。昨年発表された2015年TOEFL iBTテストの結果を見たら、スピーキングセクションでは日本は世界最下位でしたよね。受験のときにあれだけたくさん勉強をさせられるのに、それでも世界最下位というは、あまりにも子どもたちがかわいそうでしょう。じゃあどうしたらいいのかと考えると、やはり多少強制的にでもマンツーマンの状況を作り出し、生徒が「話さざるを得ない」状況を作り出すしかないと思った訳です。

オンライン英会話は、現在高校生の息子も利用しているんです。中学1年生の時に3週間の語学研修でイギリスへ行ったのですが、帰国後に聞いたら「言いたいことはあったけど、どう言えばいいか分からなかった。だからほとんど話ができなかった」と。それから一緒にラジオ講座を聞き始めて、中学3年生からオンライン英会話を始めました。結局聞くだけの勉強では限界がある。1対1で話さなければ何も始まらないんですよね。

目標に向かって“しぶとい”努力を

来年度からは先程お話した国際バカロレアコース、ゼミや学会発表、論文制作を通して、深く学ぶ力を育てる文理探究コース、看護学部や薬学部への進学を目指すメディカルサイエンスコースなど、男女共学部、女子部合わせて5つのコースを新設します。そのうち、現在の千代田女学園の教育を継続するリベラルアーツコースに関しては、オンライン英会話を一つの授業として全員に必修とする予定です。

全学年160人の生徒に5つのコースというのは多すぎるという意見もあるかも知れませんが、私たちは子どもたちの多様性を大切にしたいと考えています。子どもたちにはそれぞれの得意分野があって、興味の対象も、将来の目標もそれぞれ違う。それでいいんです。今後の学校教育に問われるのは、いかに一人一人のニーズに応えられるかだと思います。

オンライン英会話を導入したことで、生徒の英語力がどのように変化するかは、TOEFL Juniorのスコアなどを定期的に観察しながら見ていきたいですね。昨年、アメリカの心理学者が書いた本でも話題になった“グリット”のように、何事においても成功を収めるためには頭の良さよりも、目標にむかってしぶとく、継続的に努力できる力が重要。英語力はそう簡単に身に付くものではないかも知れませんが、生徒にはあきらめず、粘り強く頑張ってほしい。それが私の願いです。

将来は人工知能が発達して来て英語学習は不要になるという話もあるようですが、私はそうは思いません。母語とは違った言語で情報を集めたり、考えたりできる力というのは、問題を複数の方法で並列処理し、最適解を導き出す力と共通する部分が非常に多い。海外とのつながりがますます密になっていく今後の社会では、やはり英語力は必須だと思います。

―どうもありがとうございました。

ご自身もオンライン英会話を利用して下さっていると言う荒木校長。毎回のレッスンでは大学入試やICTなど、教育関係のトピックを取り上げているそうです。来年度からは千代田高等学院と千代田インターナショナルスクール東京の両校で、午前中に“tea break”の時間が毎日設けられるのだとか。これからの千代田女学園が、ますます楽しみです。

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