2017.08.21

「こげな英語でよかとね」アメリカ旅行で消えたコンプレックス

英語ネイティブ信仰は捨てよう僕らは日本語の“ネイティブ”だから

安河内哲也さん (東進ハイスクール・東進ビジネススクール講師)
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予備校の人気英語講師としてテレビでもおなじみの安河内哲也さんは、文部科学省の有識者会議委員として4技能試験の普及に取り組むなど、長年に渡り英語教育の第一線で活躍しています。「英語なんて言葉なんだ。やれば誰だってできるようになる」「過去の成績は関係ない」といったポジティブな言葉が印象的ですが、学生時代には自身の英語力にコンプレックスを感じ、モチベーションをなくしかけたこともあるのだとか。帰国子女でもなく、長期の海外留学経験もなく、それでも英検1級、TOEIC満点という超ハイレベルの英語力を身に付けた安河内さんに、英語との出会いや英会話レッスン受講の“コツ”をうかがいました。

「英語=カッコいい、憧れ」 でも、学校の成績は×

私は福岡県のド田舎に生まれました。当時はインターネットなんてもちろんなく、英語に触れる機会と言えば、映画くらいのもの。娯楽も少ない時代でしたから、アメリカ映画を見ることが何よりの楽しみだったんです。

当時の私にとって、英語やアメリカは憧れの対象でした。意味もわからないのに「スターウォーズ」の“May the force be with you!”というセリフを真似してみたり、ね。でも、英語の成績はそれほどいい方ではなかったんです。高校生の頃もマドンナやマイケル・ジャクソンなどの洋楽をよく聞いていましたが、学校の英語の授業は全文和訳みたいなものばかりで興味が持てなかった。「憧れの英語」と「学校の英語」は別物でした。

卒業後は浪人して地元の予備校へ通い、1年後には東京の大学の英語学科に合格できました。ところがいざ授業が始まったら周りは帰国子女だらけ 彼らは不意に机にぶつかった際の一言が“Oops!”だったり、うわさ話でびっくりしたときのリアクションが“Oh my God!”だったりするわけです。即、「終わった」と思いましたね笑。予備校では成績上位だったのに、大学に入った途端に奈落の底に突き落とされたような気分でした。

デタラメでも話しちゃえと思えた転機はアメリカ旅行

そんな私にとってターニングポイントとなったのが、大学2年の夏に行ったアメリカ旅行です。「TOEFL試験に出て来るような、完璧な英語でなければ恥ずかしい」と思い込み、英語は決して話さず、日本人同士で固まって過ごしていた私は、宿泊先のユースホステルにいたヨーロッパ人、アジア人のバックパッカーたちの英語を聞いてびっくり。お酒を飲みながらにぎやかに話している彼らの英語は、よくよく聞いてみたら、時制はめちゃくちゃだし、アクセントもでたらめ。それでもみんな、すごく楽しそうなんです。

ある日、ビールを飲んで若干気分が大きくなった私は、「へたくそな英語でもいいから話してみよう」と、思い切って輪の中へ。そうしたらちゃんと会話は成立するし、みんなとも打ち解けることができたんです。「ああ、こげな英語でよかとね〜」と安心して、それ以来、英語をベラベラとしゃべり続け、現在に至る……という感じです。

大事なことは「細かいことは気にせずに、どんどんしゃべって練習すること」だと気付いてからは、私の学生生活も変化しました。プレゼンやディスカッションの授業で心がけたのは、内容を事前にしっかり考えて、笑いを取ること。帰国子女のように話すことはできなくても、クラスでは一番目立っていたと思います。アメリカ人の先生から「安河内の英語は素晴らしい」と褒められて、自信も付きました。

あれから約30年。毎日英語を学び、話している私ですが、いまだにネイティブスピーカーのようには話せません。でもそれは全く恥ずかしいことではないんです。なぜなら自分は日本語の“ネイティブ”だから。英語は外国語として使いこなせれば十分だと考えているからです。

英会話レッスンを継続し、上達させるキーは「目的」

英会話を上達させたいと思っているみなさんに、私からつアドバイスがあります。英会話レッスンで確実に力を付けるコツは、目的意識を持って臨むことです。そのためにも、レッスンの前には、必ず「目的」を持ってください。毎回ただ世間話のような会話をしていてはモチベーションも維持できませんし、話のネタも2週間が限界では自分が英語で話したいトピックを決めて必要な単語を調べる、想定問答をいくつか考える。これだけで、英語力の伸びは大きく変わってきますよ。

オンライン英会話は料金がリーズナブルだし、スキマ時間を有効活用できるし、本当におすすめです。フィリピンの先生は明るくて話しやすいし、先生の後ろを猫がウロチョロしていたり、子供が歩いているのが見えたりするのもリアルで楽しい。私の家族も最近オンライン英会話を利用しているようで、心なしか英語がフィリピン訛りになっている気がしますね。アクセントが身に付くくらい英語が体に染み込めば、大成功じゃないですか 英語を上達させたかったら、アメリカ人、イギリス人とでなければ、英語を話さない、なんて考えは、今すぐ捨ててしまいましょう。

レアジョブ英会話では学校の先生のユーザー様も多くいらっしゃいます。
ぜひ先生に向けてのメッセージをお願いします。

大学入試が4技能型になろうとしている今、もしかしたら不安を感じている先生方や学生もいるかも知れませんが、そんな必要はありません。先生方は大手を振って指導要領通り、言語活動型の授業をすればいいし、学生は楽しみながらたくさん英語を話す練習をすればいい。それが大学入試で求められる能力の育成にもつながるし、知識だけではない本物の「英語力」を養うことにもつながるのですから。私も4技能テストの本格導入に向けた情報を、今後ますます色々な場所で発信して行きたいと思います。

↓↓↓安河内先生のインタビューはこちらでもお読みいただけます↓↓↓

RareJob English Lab『英語教育改革や機械翻訳で「日本人の英語」はどう変わる?安河内先生に聞く“転換期を迎える英語との向き合い方”』

安河内哲也様 プロフィール

安河内哲也(Tetsuya Yasukochi)1967年生まれ、福岡県出身。上智大学外国語学部英語学科卒業。東進ハイスクール・東進ビジネススクール講師を務めるかたわら、TOEIC運営委員会や英語検定協会での講演活動などを通じて、実用英語教育の普及活動に取り組んでいる。また、文科省の英語教育の在り方に関する有識者会議の委員として、大学入試に英語の外部試験を活用すること、読む力を中心に試すものから「読む、聞く、書く、話す」の4技能型にシフトすることの必要性を説いてきた。著書は英語参考書のほか、英語のライトノベル、『350万人が学んだ人気講師の勉強の手帳』(あさ出版)『できる人の教え方』(中経出版)などのベストセラービジネス書など多数にのぼり、発行部数は累計350万部を超える。TOEICスコアは1390点満点(LR990点+SW400点)。通訳案内士の資格も持つ。韓国語も勉強中。
公式フェイスブック(https://www.facebook.com/tetsuya.yasukochi
公式サイト(http://www.yasukochi.jp/

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