2017.04.26

ビジネス力に英語を足しさえすればいい

ビジネスパーソンの武器は、「目的志向」と「ロジカル思考」

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藤村 融さん
外資系マネジメント
コンサルタント

自作の教材で外資系マネジメントコンサルタントとして活躍される藤村 融さん(MBA、Med教育学修士)。日本とニューヨークを行き来しながら、多くの多国籍企業に対して、ビジネスコンサルティングを提供されています。英語はもちろん、フランス語、スペイン語も習得したそうです。「英語を使って何を達成したいのかを明確にすれば、最もふさわしい学習法は自ずと見えてくる」、「ロジカル思考が英語習得を早める」という藤村さんに、ビジネスパーソンが英語を学ぶときの心構えを中心にお話を伺いました。

アメリカでビジネスをするには英検1級でも不十分

——— 英語と出会ったのはいつ頃のことですか?

小学校2年生の頃、渋谷に住んでいたのですが、近くにニュージーランド大使館がありました。ある日、近所で遊んでいるとき、外国人の子どもと遭遇しました。当然、話している言葉は全くわかりませんでしたから、宇宙人に出会ったようなものです。まさに未知との遭遇。大ショックでした。その時、「自分たちが住む日本とは違う(であろう)この宇宙人たちが住む世界を覗いてみたい」という思いを強く持ちました。後々、そのためには、英語という言語を習得する必要があると分かったんです。

——— ニューヨークのコンサルティングファームに採用されるまでの経緯を教えていただけますか?

小学生のときにエイリアンに遭った後、アメリカの企業に採用にされるまでの間、残念ながら英会話のレッスンを受けることも、まして、留学もかないませんでした。ですから、40才くらいまでは純日本育ちの純日本人でした。大学まではずっと公立で、当時は英会話スクールも高かったですし、留学なんて夢の世界の話でした。その時にレアジョブ英会話があれば、違ったのかも知れませんが…。

大学卒業後、マーケティング会社勤務の後、アクセンチュアを経て、四大監査法人系のコンサルティングファームの1つであるKPMGに勤務しました。2,3年経った頃、「今しかない」と思い行動を起こしました。年齢を意識したかも知れません。ニューヨークのKPMGに電話やメールを送り続け、ようやく一年後にチャンスが巡ってきました。ただ、日本と米国のKPMGは別会社です。もちろん社内異動はありませんので、一般のアメリカ人と同じように、外から応募するしかありませんでした。

そのため、「じゃあ、一度会ってあげるよ」と言われるや否や、会社を3日休んでニューヨークへ飛んで行きました。「採用する」なんて一言も言われていません。ただ、このチャンスを逃したら一生後悔すると思い、初対面なのに無理やり面接をしてもらい、”Come back next month.”という言葉をもらいました。まさに、しつこさ(Perseverance)の勝利ですね。

——— 藤村さんの英語はアメリカではどうでしたか?

最初はかなり悲惨でした!アメリカのコンサルティング業界では、採用されても貢献できなければ短期でクビになることも珍しくありません。日本で「あなたの英語は上級ですね」と言われても、多くの場合、現地では最低レベルに近いです。私も例外ではありませんでした。私は大学1年で英検1級を取りましたし、TOEICもTOEFLもずっと高得点を維持していたので、英語にはある程度自信がありました。でも、それは大きな勘違いでしたね。

KPMGでも、その後に移籍したローカルのコンサルティング会社でも、チームの中で日本人は私ひとり。面倒を見てくれる先任者もいません。生活の全てがチャレンジでした。外国に住むこと、働くこと、上司との付き合い方、ほぼ100%非日本人の会社で業績を上げることだけではなく、家探し、保険への加入、銀行での口座開設ソーシャルセキュリティー番号の取得など、文化や社会のしくみが日本とは大きく異なる中、全て自分一人でやらなくてはならない環境で、非常に鍛えられました。おまけに、初期は相手の言っている英語がさっぱり分からないことも多く絶望感と戦う日々でした。何度日本に帰ろうと思ったか分かりません。

ビジネスで成功するにはネイティブスピーカーと同等かそれより貢献できなくてはなりません。そうでなければ、企業はネイティブスピーカーを雇えばいいんです。ですから、精神的にも身体的にももかなりの負担がありました。ただ、絶対にクビになるわけには行かないので、悩みに悩んで試行錯誤し、独自の英語学習法と教材を考え、つくり出しました。

私がNYで“垂直立ち上げ”するために重視していたことは大きく3つあります。第一に、「目的を明確にして最適な学習方法を使うこと」。私の時間は限られていました。

重要点の二つ目は、「ロジカル思考を活用すること」です。ビジネスにおいては、全ての事柄が問題解決です。売上を増加させる、いい製品を作る、サービスの質を向上させること、すべてが問題を解決するか、機会を捉えるために必要なアクションです。ビジネスにおいては、ロジカル思考を最大限に活用して、英語力の低さ(ネイティブスピーカーと比べて)を補う戦略が大変有効です。このアプローチは、ビジネススクールの授業でも役立ちました。

英語で何を達成したいのかを明確にする

——— 実は近々ハワイに出かけて、現地で洋服店を経営している外国人の友人とランチする予定があるのですが、どのような準備をしていったら会話に困らないでしょうか。

ビジネスプレゼンテーションなどと違って、会話(雑談)は話があっちこっちに飛ぶため、準備するとしてもどうしていいか困りますよね。私が、ニューヨークで日本企業の幹部の方々に同様のことを教える機会がありその時に行った方法が、「脳内のネットワークを真似る」というやり方です。

想定されるトピックを整理して話す内容を考えておきます。これだけですと、既に多くの方がやっていることかもしれませんが、さらに、いつくかのトピックをまとめて、ドメインという単位で管理します。私たちの頭の中で普段、“話のネタ”が蓄積されているのと同様のしくみを使います。そして最初は、このようにブレインストーミングから始めます。

お友達は、ハワイで洋服屋さんを経営しているということですから、「Amazonが強くて困る」、「リテイルが大変」、「アメリカの中で一番物価が高い」、「白人の人口よりもアジア系の方が多い」、「時給が低い」、「日本とアメリカではファッションセンスが大きく異なる」など、考えられるトピックを洗い出して、マインドマップでまとめます。全体の構成ができたら、それにそって英語の表現を埋めていけばいいんです。会話ですから、複雑な文は必要ありません。高校一年生くらいのレベルがあれば、十分です。こうすれば、ファッションというドメイン内でおしゃべりをしている限り、とりあえず会話は持ちますよ。私は実際に日系企業の幹部の方々をトレーニングしましたが、結構効果はあったようですね。

——— 一番大切なのは目的をはっきりさせ、最適な方法で学習するということなのですね。

はい。例えば、同じマラソンをする人でも、オリンピックを目指している人と、リラックスするために走っている人では練習方法が全く違います。英語の学習も全く同じで、目的によって最適な鍛え方を見つけることが大切です。そうすれば、早く、効果的に英語が上達します。

もうひとつ、ビジネスパーソンにとって重要な観点は、ビジネス力と英語だということです。忘れてほしくないのは、英語ではなくビジネス力が先に来る、ということです。それにも関わらず、いろいろなビジネス英語教材を見ると、ほとんどがシチュエーショナルな構成(場面別に表現を暗記させることが目的になっている)で、ビジネスに必須であるロジカル思考には全く触れていません。日本の優秀なビジネスパーソンには十分なビジネス力があるのだから、本来はそこに英語を足しさえすればいいはずです。

——— 英語力、英会話力を向上させたいと思っているビジネスマンにアドバイスをお願いします。

ビジネスで何を達成する必要があるのかをはっきりさせることが重要です。アメリカでお付き合いのあった日系企業の幹部の方々を見ていても感じたのですが、ビジネス英語の参考書を端から学習、暗記するより、現在、既に持っているビジネスに関する知識や経験を活かすことが大切だし早道だと思います。もちろん、ネイティブスピーカーの発音を無理に真似しようとしたり、ペラペラと話すこと(大量の英語を継続的に発話すること)は目指しません。ビジネスの目的は、問題解決です。英語はあくまでも道具に過ぎません。それを使って何が達成できるかが重要です。日本語が使えない環境で、あなたは会社にどう貢献できるでしょうか。企画力、財務や経理の知識、ネゴシエーション力、フレンドリーで人を巻き込む力など、あなたが今持っている能力を最大限に発揮することが本来の目的なのだと思います。それをたまたま英語でやるだけです。

——— ありがとうございました。

「英語は世界でもっとも簡単な言語であるし、日本人は中学校からずっと勉強しているのだから、学習法さえ誤らなければ、本当は話せるようになるはず」と言う藤村さん。自ら考え出した学習法と教材で習得した英語(フランス語やスペイン語も)を操り、助けてくれる人のいないアメリカで11年間、確実に成果をあげてきました。だからこそ、「英語を使う目的が違えば学習法も違う」という言葉はとても説得力がありました。ビジネス力やロジカル思考をベースに英語をプラスすることで、活躍の場は限りなく広がっていくことを、自信に満ちあふれた、そして理路整然とした藤村さんのお話から感じました。

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