2017.04.17

英語専門家、起業家、そして働く女性として

苦労したからこそ使える英語を教えられる

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浅場眞紀子さん
Q-Leap株式会社代表

企業向けにビジネス英語の研修を企画・実施する「Q-Leap株式会社」を経営されている浅場眞紀子さん。英語はグローバルに活躍するために必須の情報収集ツールであり、コミュニケーションツールであると位置付けています。ビジネスシーンでより実践的に使える英語に徹底してこだわる浅場さんにとって、英語とはどんなものなのか、英語をどのように身に付けたらいいのかを伺いました。

他とは一線を画したビジネス英語研修を企業に提供

——現在の浅場さんのお仕事内容を教えてください。
コロンビア大学大学院のティーチャーズカレッジ東京校で一緒に英語教授法を学んだ愛場吉子と会社を共同経営しながら、英語のアウトプット力を向上させるためのスピーキングとライティングを中心に教えています。英語を使って働いていたときに苦労した自分たちの経験と、英語教授法の理論を合体させ、今までになかったティーチングを提供しています。

英語教授法というのは“大人になってからの第二言語習得は、なかなかうまくいかない”ことを前提として、「どうすればより効果的に習得していけるのか」を、認知心理学や言語学・応用言語学などの関連分野の研究も用いて検証していく学術法です。そのなかには、実践的なテクニックも多く存在しますので、日本のビジネスパーソンの英語力向上に役立てられるのではないか、というのが大学院在学当時からの二人のテーマでした。

——ところで、子どもの頃から英語は得意だったのでしょうか?
父の仕事の関係で、小学校時代はタイのバンコクにいました。しかし、日本人学校に通っていたため英語を使うことはありませんでした。日本で過ごした中学時代は英語が好きでしたし、成績も良いほうだったと思います。父が再度バンコク勤務となり、高校1年生から現地のインターナショナルスクールに通い始めたのですが、得意だと思っていた英語が全然聞き取れなくて、英語を話すことにも臆病になり、結果英語が大嫌いになってしまったんです。

帰国後は、周りから「英語が得意」と見られるのが嫌でしたし、帰国子女だということは自分にとって大きなコンプレックスでした。大学に入学してからも、英語に対する苦手意識はそのままで、最低限の勉強しかしませんでしたが、「やっぱり英語がもっと話せるようになったらいいな」と思っていたことも事実です。

社会とのつながりを復活させるために英語の勉強を再開、そして起業へ

——大学卒業後の進路はどうされたのですか?
私が就職したタイミングは、男女雇用機会均等法により女性にも総合職の道が開かれ始めた頃です。とはいえ、日本企業はまだまだ男性社会でした。大手の銀行や商社の総合職をめざす人が多いなか、商社に勤めていた父の影響もあり、外資系企業を選びました。結局、2社の外資系企業でトレーダーとして、シカゴ、ニューヨーク、東京で約10年働きました。しかし、1人目の子どもが2歳半の頃、トレーダーの昼夜関係ないハードな仕事と子育てとの両立は難しいと感じて退職しました。

それから10年間、専業主婦として子どもたちと向き合う生活でした。これも大変貴重な経験でしたが、3人目の子どもの幼稚園入園を機に、もう一度社会とのつながりを持ちたいと思うようになりました。しかし、経験のあるトレーダーの仕事は体力的にも時間的にも厳しく復帰は難しかったため、新たな仕事に役立てばと、ずっとどこかで気にかかっていた「英語」の勉強をやり直そうと決心しました。「ここで英語と向き合わなければ、一生コンプレックスを乗り越えられない」という気持ちがあったのも事実です。
そこで、人生で初めて語学スクールのレベルチェックを受けに出かけるのですが、行きのバスに乗ったのが、英語の世界に足を踏み入れる第一歩だったように思います。でも本当はレベルチェックが嫌で嫌でたまらなかったんです。英語がある程度できる方は割とそういう傾向にあると思うのですが、自分のレベルを評価されたくないし、それを知りたくない。私もバスに乗るのに、何日もかかった程です。でもその結果として、自分の問題点もよくわかり、前に進めました。そこからですね、英語の勉強にのめり込んだのは。

——その後、どのような経緯で起業に至ったのでしょうか?


New Yorkのティーチャーズカレッジ卒業式にて

3年ほどがむしゃらに勉強した頃、大学時代の先輩から「ちょっと塾で教えてみない?」と声をかけていただいたので、思いきってチャレンジすることにしました。講師として子どもたちと向き合っているうちに、「英語をもっとうまく教えてあげたい、そのために教え方をきちんと知りたい」という思いがどんどん膨らんでいったことが、英語教授法を学ぶきっかけです。

一般的に提供される企業研修での英語教育は、研修が大量に発生しているがゆえに画一的なテキスト使用の上に、授業は講師の力量に丸投げされるケースも多いのですが、私は、どうしてももっときめ細かく学習者のレベルに合わせた教育をしたかったんです。アウトプットの場合は個人個人で行き詰っている理由は様々ですから。また、ビジネスの現場と第二言語習得の理論をつなげる場を作りたくて、素晴らしいパートナーを得たこともあり、思いきって起業することにしました。

——最近は、女性の雇用にも力を入れられてらっしゃいますね。
女性2人で作った会社ということもありますが、能力が高いにもかかわらず、子育てなどの理由で外に働きに出られない人に雇用の機会を与えたいと考えています。採用条件は厳しくしていますが、それはその人の能力に見合った給与を支払うためです。会社も働く人も、そしてクライアントもすべてがハッピーでなければいけませんから。

また私自身を振り返ってみて思うのですが、女性が経済的に自立していることは、精神的な自立ともつながると考えています。
私の場合、3人の子どもが育ち上がるのを待たずに仕事を再開しましたが、起業したからには、いろいろな責任も生じます。それだけに一生懸命仕事をしてきましたが、そのために犠牲にしたものもあります。でも人生は常に選択だと思っています。

好きな分野で英語に触れ、情報収集とコミュニケーションのツールとして活用する

——浅場さんは“英語ができる”ことに、どんな価値を見出していらっしゃいますか?

日本では現状、英語ができなくても特に問題ありません。しかし今やインターネットの情報の4割は英語です。そういう意味で、情報収集の有効な手段として、やはり英語力を身に付けたほうがいいと考えていますし、結果的に広い視野で物事を見ることもできるようになると思います。

また、日本人は英語でのソーシャライジング(社交的にする)が苦手なんですね。例えば、事前に準備できるプレゼンは完璧にこなせるのに、会食やレセプションではまったく会話できないとか。でも、そういう場で親交を深めることもビジネスで信頼関係を築くためには重要になってくるので、最低限のコミュニケーションツールとしても英語は必須と考えています。

——英語ができるようになるためには、何をすべきでしょうか?
まずは興味のある分野の記事を、続けて読んだり、聞いたりすることから始めてみてはいかがでしょう。スポーツ記事やゴシップ記事でも、映画の評論でもいい。そのうちにその特定の分野の語彙は自然と身についてきますし、その分野の記事を自在に読めるようになれば、さまざまな関連分野への興味もわいてくるはずです。私は洋楽や自然科学が好きだったので、その分野のニュースをいつも観たり聞いたりしていました。

ビジネスマンにお勧めしているのは、ポッドキャストでNHK WORLD RADIO JAPANを聞くこと。ヘッドラインだけなら15秒ぐらいですし、重要なニュースは数日にわたり何度も放送されるので、関連語彙がどんどん増えていきます。3つあるヘッドラインのなかには、少なくとも1つは日本のニュースがあるので、理解しやすいのもいいですね。英語で最新トピックを知ることはソーシャライジングにも役立ちます。

もし余裕があれば、NHK WORLD RADIO JAPANのヘッドラインをディクテーションするのもいいでしょう。どうしてもわからないときは、NHK WORLDのWebサイトに、同じ文章ではありませんが、同じニュースがアップされているので、内容や重要な語彙を確認できます。また、ヘッドラインの無駄のないライティングはEメール作成の見本にもなるでしょう。

スピーキングに関してはコンテンツ、発音、構文、そして次の発話のことまで同時に考えなくてはいけないので、学習法はもう少し複雑になります。大切なのは英語を単語単位で扱うのではなく、意味の塊であるフレーズ単位で操作するという感覚です。将棋やチェスのように、こう打たれたらこう打つ、といった感じで、自分の中にパターンを積むことが上達のコツです。まずは主語、動詞、目的語までを止まらずに話す練習を繰り返してみてください。

——今回は貴重なお話を聞かせていただき、どうもありがとうございました。

得意だったと思っていた英語がほとんど通じないという経験から、一度は英語が嫌いになってしまったという浅場さん。それでもコンプレックスと真摯に向き合い、「もっとうまく人に英語を教えたい」という思いに突き動かされ、英語教授法を学ぶに至ったというバイタリティに、頭が下がるばかりです。

英語の専門家としてはもちろん、企業人として、女性として、続く女性たちのめざすべきロールモデルであり続けていただきたいと、心から願います。

浅場眞紀子様 プロフィール
コロンビア大学ティーチャーズカレッジ英語教授法(TESOL)修士。Q-Leap株式会社代表。TOEIC® LR 990/ TOEIC® SW400/ 英検1級優秀賞/ ケンブリッジ英検CPE
著書:TOEIC® テストスピーキング/ ライティング総合対策(旺文社)いちばんやさしい英検4級(新星出版社)いちばんやさしい英検準2級(新星出版社)

Q-Leap株式会社
企業・ビジネススクールなどへの英語研修の提供・オンライン教材へのコンテンツ提供・書籍出版などを通して日本人英語学習者、そして日本人ビジネスパーソンが言葉の壁を乗り越え世界で活躍するためのサポートを提供する会社です。
http://q-leap.co.jp

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