何事においても「何のためにするのか?」「どうやるべきなのか?」という理解は、行動を継続し、成果を出すための重要なファクターであると言えます。英語学習や留学支援のためのブログ『There is no Magic!』の運営者であり、ご自身もアメリカに留学してMBAを取得した柴﨑亮さんも、かつては英語学習の壁にぶつかった経験をお持ちです。なかなか思うような成果を出せないなか、柴﨑さんは「問題の本質は学習方法にこそある」と気づきました。ご自身の経験と英語学習に対する考え方、MBA留学からその成果に至るまでの紆余曲折をうかがいました。
日本で生きるのに英語はいらない?英語の必要性がわからなかった学生時代
私が初めて英語を習ったのは、小学生の頃に通っていた公文式でした。算数が一番得意、国語は普通。英語が嫌いで、試験のたびに毎回泣いていたことを覚えています。アルファベットを書けるようになったのもこの頃でしたが、スペルを覚えている英単語といえばAppleぐらいしかありませんでしたね。
私は埼玉県の田舎で育ちました。ですから、小学校から高校までは生活において英語を使う機会も、外国人と英語で話す機会も一切なく“英語は勉強している(やらされている)けど役に立たない”“真剣にやっても意味のないものだ”という意識が強かったです。周りに留学経験のある親戚や友達もいなかったので、そもそも人生の選択肢として留学を考えることもありませんでした。
大学卒業後は会計士として監査法人に入社しました。ところが、そこでも英語を使う機会はごく限られていたので、「英語は大事そうだから勉強しなきゃ…」といつも思ってはいるものの、なかなか本腰があがらない日々。仕事も相まって、英語学習のための時間をつくることができませんでした。
ちなみに、大学1年生の時に約1年間は英語学習に励み、TOEIC®のスコアを約800点にまで伸ばしました。しかしその後に何も続けなかったので、結局卒業時には500点くらいにまでスコアがダウン。やはり、自分の生活において試験以外に英語の使い道がなかったことが、学習を続けられなかった原因かもしれません。
30代という節目を前に“MBA留学”という夢へ踏み出すことを決意
実は、高校生の頃から「いつかMBA留学をしたい」という想いを抱くようになりました。きっかけは、友人から勧められた『ウォールストリート投資銀行残酷日記~サルになれなかった僕たち~』という書籍。MBAの卒業生が高給を稼ぐストーリーを読み、単純に「こんな世界があるんだ!」と知った驚きがありました。現在では投資銀行で働きたいとは(能力的にも)思いませんが、この1冊の本との出会いから、MBAや留学で広がる可能性に憧れ始めたのです。MBAには英語学習が欠かせません。しかし実際には、大学時代も社会人になっても日々の生活では英語の必要性をリアルに感じられず、なかなか本腰を入れて勉強するには至りませんでした。私が英語学習を本格化させられるようになったのは、2つのきっかけがあったからです。
それが、“転職”と“30代の節目を迎えたこと”でした。
監査法人から転職したのは事業会社。仕事を始めた当初はそれほど英語を使う必要がなかったものの、ビジネスの急速な拡大とグローバル化に伴い、海外とのやり取りが増えていきました。英語を使いこなせないことでスムーズに仕事が進められずフラストレーションがたまったり、逆に英語力を武器としてチャンスをつかむ人たちの姿を目の当たりにしたりもしました。
たとえば、専門的スキルは自分と同じレベルでも、英語を話せるかどうかによって収入に大きな差が生まれます。つまり“英語ができない=失う機会が多い”という現実を実感しました。たとえどんなに優秀な人でも日本語しか使いこなせなかったら、同じレベルで“英語”という武器を備えた人には勝てないのです。
同時に、社会人として働きだして数年が経過し、30歳という節目の年齢が見えてきました。人生設計や中長期的な働き方を考えるようになり、ずっと心の隅にしまっておいた「いつかMBA留学に行ってみたい」という想いがよみがえってきたのです。今でこそ柔軟な働き方や家族のスタイルの選択肢が増えてきましたが、当時は「このまま30歳を迎えて、結婚して、子供ができて、どんどんリスクを取れなくなり、やりたかったことが実現できなくなるのでは…」と思いました。「本当は行きたかったけど、いろいろあって行けなかった」と言うカッコ悪いおじさんになるのが嫌だった私は、思い切って仕事を辞めて留学準備に専念することを決めたのです。
また、「海外でMBAを取得して、英語も使いこなせるようになれば、自分の可能性が今以上に広がるはずだ…」という思いも、その決断を後押しました。
英語学習の壁を乗り越えボストンへ――自分に合った学習法を今も継続中
意気揚々と仕事を辞めたものの、MBA留学への道は想像以上にハードなものでした。留学予備校にいくつも通ったものの、TOEFLのスコアが思ったように伸びなかったのです。私は勉強が得意な方だったので、英語も集中してやればできると思っていました。しかし、実際はそう簡単なことではありません。留学予備校の講師が推奨する勉強法を信じて忠実に守り、数ヶ月にわたり1日12時間以上勉強しましたが、スコアは上がるどころか下がっていきさえしました。何かが間違っていたのです。TOEFL会場への道で、涙を流すこともありました。
このまま同じことを繰り返していてはまずい――。そこで、思い切って予備校のやり方を捨て、一から勉強法を見直しました。予備校では、何度も同じ問題を解く・読む・シャドーイングや音読を毎日何回行う…といったことを教わりました。しかし、冷静に考えてみれば、必ずしもそうした勉強法だけが正解ではないとわかりました。
そこで基本に返り、まずリーディングはKindleで英語の本を読む時間を増やしました。リスニングも、シャドーイングや音読に力を入れるのではなく、幅広い音源を聞き、自分の聞き取れる音を増やせるよう努力をしました。トイレにいるときは単語を覚える、ランニングをするときも英語音声を聞く、休み時間も英語でドラマを見たり本を読んだり…と、英語漬けの鬼のような生活をしていたと思います。
英語への向き合い方を変えてからは徐々にスコアが伸びはじめ、最終的には目標点を達成し、第一志望の学校に合格することができました。
もちろん、留学後も英語で苦労がなかったことはありません。いくらTOEFLで高得点が取れても、試験の英語とリアルの英語は完全に別物です。アメリカに来てから知ったのですが、特にボストンはアクセントが強く、英語をしゃべるスピードの速い地域。こちらについた当初は全然ついていけず、地獄のような日々でした。
MBAの1年目は学校も忙しく、課題や試験、グループワークをこなすので精一杯でした。それでも、一つひとつクリアすることで徐々に英語力も付いてきたと思います。
留学という夢を達成する前も、した後も、根本的な英語の学習法は変わりません。リーディング力を上げたければもっと読む、リスニング力を上げたければもっと聞く。地道ではありますが、その方法以外に英語力を大幅に改善する方法はないと思っています。
留学して一番苦労したのは、スピーキングではなく、実はリスニングです。相手が何を言っているのかわかれば、こちらも何か言えますが、問題は何を言っているのか理解できないことです。リスニング力を上げるために、ちょっとした時間でもドラマを見たり、ポッドキャストを聞いたりしています。最近はNetflixで『NARUTO-ナルト-』を見ているのですが、英語も聞き取りやすく、内容も面白いのでおすすめです。こうやって、自分でも続けられる題材を見つけて、楽しみながら毎日英語に触れることこそ、英語力アップの秘訣です。毎日コツコツ少しずつ、一生勉強を続ける「忍耐力」が試されます!
日本人の英語学習や留学を応援するブログを開設
自分の経験を通して「日本人の英語がスムーズに伸びないのは、そもそも非効率で間違った勉強法に固執しているからではないか?」と考えるようになりました。ご存知の通り、これまでの日本の英語教育では、リスニングやスピーキングよりも文法の指導に重点が置かれていました。指導者もそういった教育を受けている以上、彼らから勉強法を教わっても実用的な英語力を伸ばすことにはなかなかつながりません。
この状況を自分で解決するしかない!と思って作ったのがThere is no Magic!!です。私の英語学習方法や経験をシェアすることから始めましたが、最近はたくさんの方が勉強法や経験をシェアしてくださるようになりました。TOEFLやIELTSで高得点を獲得した人、仕事で英語を使うビジネスパーソン、留学経験のある高校生や大学生など、そうした皆さんがどのように英語力を上達させてきたのか、その方法論を共有しています。これまでにも「短期間でTOEFL100点を超えた!」といった報告を多数寄せていただきました。今後もサイトの運営を通してより多くの人に正しい英語の勉強法を届け、英語学習や留学の夢の達成を応援し続けたいと思っています。
留学経験を活かし、海外で活躍するチャンスを掴んだ
2019年3月現在、2年のMBA留学生活も終盤にさしかかり、あと数ヶ月で卒業です。英語がある程度できるようになったことで、卒業後、こちらに来る前は選択肢にもあがらなかったような機会をたくさん見つけることができました。最終的に卒業後はアメリカに残り、こちらでまたゼロからキャリアを作ることを決意。留学前は英語で仕事のインタビューなんて想像もできないくらいハードルの高い挑戦でした。しかし、この2年間を経てそれをクリアし、アメリカでオファーを頂けたのは、留学をしなければ絶対に実現しなかったことだと思います。もちろん、海外で英語を使っての仕事というのは、まったく未知の領域です。苦労もたくさんあると思いますが、それ以上に得られるものも多いのではないかとワクワクしております!英語学習の先にある可能性を信じ、そのチャンスをしっかりとつかんでいきたいと思います。