「いつか海外留学を…」と思っている社会人の方もいるのではないでしょうか。株式会社乃村工藝社の藤野さんは、「いつか海外へ」という学生時代からの想いを、今年ついに実現します。東京2020大会を支えるスポンサー企業の一社で広報を担当している藤野さんは、その千載一遇のチャンスをキャリアビジョンにおいて重要なポイントと意識する中、休職してイギリスの大学院への留学を決断しました。あえて険しい道に挑んだその理由や、仕事と両立しながら英語力をアップさせた学習法について、教えていただきました。
「海外」にはむしろ全く興味がなかった
ニューヨークに留学した時のクラスメイトとの写真
海外留学をすると言うと「もともと海外に興味があった」と思われがちですが、むしろ学生時代はまったく興味がなかったんです。そこから海外に強く惹かれるようになったきっかけは、大学卒業前に1カ月間ニューヨークへ行ったことでした。「今しかできないことをしよう」と考えたときに決めたことは二つあり、アパレルショップのフルタイムスタッフとして働くこと、そしてその貯まったお金で海外へ行ってみることでした。「今しかできないことをしよう」という思いに焦点をあてた中での短期留学でしたが、そこで価値観が劇的に変わったんです。変化の大きな要因は、母国でずっとマジョリティとしてしか生きてこなかった自分が、初めてマイノリティになるという経験をしたことです。ニューヨークの郊外で、電車に乗っているだけで、「アジアの人だ、日本人だ」と目を向けられる。語学学校で過ごすなかでも、自分とまったく異なる考え方の人がいることを知り、「もっと違う世界も知りたい」「いろんな人と話してみたい」と思うようになり、「もし、入社してから3年後も同じ想いだったら、もう一度海外へ行こう」と決めました。そして3年経っても想いは変わらず、ついに昨年、本格的に留学を考え始めました。
「どんな形で海外へ行こうか?」と考えていた時、語学学校へ通うか大学院に入るか迷いました。しかし語学学校に通い、英語を話せるようになるだけでは自分の市場価値はさほど上がらないことが想像できたため、せっかくならば今の業務に関連し、専門領域で強みを発揮できる教科を学びたいと思いました。自分なりに考えた結果、キャリアビジョンを実現するためのステップとして留学するために、海外の大学院でマーケティングを学ぶことにしました。
留学先はイギリスとアメリカが候補に挙がったのですが、イギリスの大学院ならばmaster’s degree(修士号)が1年で取得でき、かつ社会人を経験した留学生が多く集まるとのこと。アメリカの場合は卒業までに2年かかる上に、入学するためにTOEFL iBTだけでなくGMATという数学を含むテストを受ける必要があります。英語で書かれた数学の問題を解くのは難しいことと、2年間だと費用もかさむため、イギリスに決めました。
合格を目指して、仕事と毎日3時間の英語学習を両立
イギリスの大学院に入るには、IELTSとエッセイ等(出願書類)が必要でした。大学卒業後、まったく英語に触れてこなかった僕がIELTSの模擬試験を初めて受けた時のスコアは、リーディングとリスニングが6.0、ライティングとスピーキングが4.0という、The・日本人的なスコアだったんです…(笑)。志望する大学院に入るには、オーバーオール・バンド・スコア(総合評価)で最低でも6.0、できれば6.5以上が必要。よって、ライティングとスピーキングの対策が急務でした。
スコアを上げるために、まずはIELTS対策ができるスクールに通いました。全部で3カ所、トータルすると4カ月間ぐらい通ったと思います。本腰を入れて英語学習を始めたのは、昨年の10月にコンディショナル・オファー(仮合格)が出てからです。イギリスの大学院では「あとは英語のスコアがクリアできれば合格」という仮合格を出してくれるんですよ。そこからはスクールに加え、オンライン英会話でスピーキング対策を始めました。
スピーキング力とライティング力の対策のやることリスト
オンライン英会話を始めてからは、毎日2~3時間ほど学習していました。会社の休み時間に30分のオンライン英会話を受講し、帰宅後9時ぐらいからスクールの課題やIELTSの過去問演習。短期間で結果を出さなければならなかったので、飲み会にもあまり行けず…(笑)、24時頃まで英語学習する日々が続きました。
約4カ月でスコアをアップさせた、スピーキング力向上の秘訣とは
オンライン英会話は2社使っていて、IELTS対策コースがあるオンライン英会話でライティングの添削をしてもらったり、レアジョブ英会話ではお気に入りの先生にIELTSのスピーキング対策をしてもらったりしました。
レッスンで先生から送られてきたチャットの画面
レアジョブ英会話での先生選びの基準としては、英語が聴きやすいことはもちろん、僕が話した内容をチャットに書いてくれることが重要でした。自分が話した事をチャットで書いた上で、正しく修正した文章も書いてもらえると、何が悪かったのか一目でわかります。例えば僕が “skillful businessman” と言った時に「 “skilled businessman” の方が自然ですよ」と教えてもらったら、次のレッスンでその表現を使ってみたり。復習の時にチャットの内容をノートに書き写して確認し、次のレッスンの前にも必ず見返します。この予習復習の繰り返しが、スピーキング力向上にかなり効果があったと思います。
レッスンで間違えた内容をノートに書き留めて復習
もう一つ、効果があったオンライン英会話の学習法で言うと、なるべくビデオを使わないようにしていました。最初はお互いの顔が見えていた方が話しやすいと思いますが、慣れてきたらビデオを無くして情報量を少なくすることで、コミュニケーション力が試されます。あえて負荷をかけて、表情や身振り手振りに頼らずに会話で伝える力を伸ばしました。
留学経験を、世界的スポーツイベントのスポンサー企業での広報業務に活かしたい
英語学習を始めてから1年、IELTSのスピーキングは、最高スコアで6.5を取得できました。全体のスコアは6.0で、最低ラインの目標は達成。ついに今年の夏から、イギリスの大学院に入ることになりました。
IELTSのスコアシート
また、これは珍しいパターンだと思うのですが、留学する1年間は休職させてもらう予定なんです。会社を辞めずに留学できるのは、とてもありがたいですね。乃村工藝社は、空間デザイン業務で社会に価値を提供するうえで、それを生み出す “人財” を大事にしており、自由な社風でもあるので、今回の休職もOKしていただけました。ただ、仕事に活かすための留学とは言え自己都合の休職ですから、帰ってきたら会社に貢献したいと強く思っています。
留学から戻るのは東京2020大会開催まであと1年という時期です。仕事に活かすためにマーケティングを学ぶのはもちろん、様々なバックグラウンドを持つ人達と接し、異文化を理解しようと努めて、その経験をオリンピック、パラリンピックに関わる企業の広報として活かせればと思っています。今考えている「留学後にこうなりたい」という自分の姿を実現するためにも、イギリスでスキルアップして戻ってきたいです!