1968年に日本・イギリス・アメリカの合弁会社として創業されたポップリベット・ファスナー株式会社は、主に自動車部品などに使われる工業用ファスナーを製造・販売しています。外国資本のため、英語での報告は以前より行われていましたが、グループ全体での体制変更により、Regionごとのマネジメントとなり、レポート先がアメリカ本国から統括拠点のシンガポールへ変わりました。そのため、電話会議など直接コミュニケーションを取る頻度が増え、管理職を中心に英語力の必要性が急速に高まったことから、英語学習のサポートを強化するべく、管理職向けに英語研修を実施することになりました。
しかし対象となった拠点が、本社のある東京と工場のある豊橋と離れていたため、2拠点同時に東京からリモートで受講を管理し、社員のモチベーションを保つ必要がありました。そこで、オンラインとオフラインを組み合わせることに。リモートでも受講を促進し、成果に繋げられた理由とは?
工業用ファスナーを製造・販売 取引先の7割は大手自動車メーカー
ポップリベット・ファスナー株式会社は、1968年に日本・イギリス・アメリカの合弁会社として創業された、工業用ファスナーの製造と販売を手掛けている企業です。工業用ファスナーは、自動車部品、住宅、一般家電、高速道路の防音壁の金具などに使われており、耳慣れないものの実は私たちの生活の近くで活躍しています。特に自動車部品としての需要が高く、取引先の7割は、大手自動車メーカーが占めています。
親会社は、アメリカに本社がある世界最大の工具メーカーである、スタンレー・ブラック&デッカーで、そのファスニング部門に所属しています。拠点は世界24カ国に存在し、それぞれローカライズして、各国のお客様に最適な製品やサービスを提供できるような体制になっています。
ちなみに、親会社スタンレー・ブラック・アンド・デッカー(当時: ブラック・アンド・デッカー)は、1971年のアポロ計画で使われた月面切削用コードレスドリルのNASAとの協同製作は、現在主流であるコードレス製品開発の起点となっています。
レポート体制がメールから電話会議に変更 これまで以上に求められる英語力
親会社がアメリカの企業なので、英語が必要な場面は以前も少なくありませんでした。営業、購買、財務、品質保証などの部署では業務でそのような場面が度々発生し、さらに管理職は部署問わず、親会社へ英語で報告をする必要がありました。とはいえ、アメリカとは10時間以上の時差があるため、やりとりはメールが主流。英単語や伝え方を調べながら、時間を掛けて準備をすることができていました。しかし、ここ数年のうちにグループ全体で体制の変更があり、報告は本社へ直接行うのではなく、シンガポールにあるアジア統括拠点へ報告することになりました。シンガポールと日本の時差は1時間程度。時差を気にする必要がないため、電話会議で報告を求められることも増えました。電話会議ではメールと違って、質問にすぐさま回答できる瞬発力と、その下地となる英語力が必要となります。そういった背景から、報告を行う必要のある管理職は特に、これまで以上に英語力が求められるようになりました。
もちろん、管理職や特定の部署以外の社員は、英語が必要ない訳では全くありません。ほぼ毎日本社からは、メールで全社員に対してCEOのメッセージや、新組織、情報システム・セキュリティに関する案内など、様々な情報が配信されるのですが、そのメールはすべて英語で書かれています。最新の情報を取り入れようと思うと、職種や役職は問わず、英語は必須なのです。
場所を問わず平等な学習機会を与えるためにオンラインサービスを導入
英語力強化のための取り組みは、以前からいくつか行っていました。具体的には、通学型の英会話教室のレッスンや、社内に講師を招いた英会話研修です。こうした研修を用意していたものの、必ずしも、どの拠点でも均等な学習機会が提供できている訳ではありませんでした。教室のバリエーションや数などは東京がやはり圧倒的に多いです。また、通学レッスンとなると、仕事が忙しい社員ほど終業後に通うことが難しくて、受講を断念してしまうケースも頻繁にありました。
今回は、東京本社と愛知県にある豊橋の工場の2拠点同時に、管理職を対象とした6カ月間の研修を検討していました。そのため、より柔軟に、且つプログラムの受講は両拠点平等に研修を行えるサービスが無いか探していたところ、オンライン英会話レッスンとオフラインセッションを両方提供している、「レアジョブ英会話」に決めました。
オンラインで英会話レッスンを受けられて、1レッスンあたりの時間は25分。この形態と所要時間であれば、昼休みや終業後にも気軽に取り組むことができ、且つエリアを問わず受講することができます。
また、開始前に行った受講説明会は東京から中継し、豊橋の受講者も参加できるようにして、オフラインセッションはそれぞれで実施するなど、2拠点どちらも全く同じ内容でプログラムを組み、差が出ないように心がけました。
直接できなくても、間接的にできる受講促進の工夫
レッスンは、社員の自主性に任せて受講してもらえるなら、それに越したことはありません。当社も、最初は特にこちらから受講者へ能動的なアクションはしていませんでした。しかし、研修が始まって3ヶ月ほど経過してから受講状況を見てみると、社員間でかなりばらつきがありました。研修の目的は、自己啓発ではなく緊急性の高い管理職の英語力向上ですし、会社としては皆一律に受講してもらうことを期待しています。東京本社にいる受講者にはオフィスですれ違った時などに一声かけて促すこともできますが、豊橋にいる受講者には、それはかないません。そこで、受講を促す施策の一環として、毎月、全員の受講状況をランキングとして公開しました。そうすることで、自分の現状を知って、受講回数の少ない方が危機感を持ってレッスンの受講に励んでくれればと期待したからです。
また、今回の受講者は、一般社員ではなく管理職です。そのため、担当者自身から直接催促しづらいというケースももちろんありました。そんな中、工夫したのは、受講をお願いするメールの宛先にccとして社長を含めて連絡することです。この一連の英語力向上プログラムを発案したのは社長なので、英語をしっかりと学んで実務で活かしてほしいという社長の願いも込めつつ、少しプレッシャーも与えました(笑)。
オフラインセッションも組み合わせて学習効果を最大化
ランキング開示など、外的に受講を促す施策はもちろんですが、根本的に受講者のモチベーションを保つ研修の設計も必要です。今回の研修は6カ月間と短期集中でもあったことから、より効率性を求め、オフラインセッションを組み合せた研修を行いました。合計4回、講師を招いて、ビジネスシーンのロールプレイングを、受講者複数名のワークショップ形式で行うもの。「宿題が大変だ」という声もありましたが、研修期間中にこのような小さい目標があることで、モチベーションに繋げることができ、また、短期間集中して学習と実践のサイクルを回すことができたと思います。両方のレッスンを受講したことで、「海外からの来客があった際に、昨年はほとんど話すことができずに終わってしまったが、今年は自分から話しかけられた」という社員もいましたし、研修前後で受けたスピーキングテストの評価項目は、全体的に大きく変化し、特に『文章構成』と『流暢さ』が著しく向上しました。
研修以外でも日頃から英語に興味を持ってもらうための地道な積み上げ
学習する本人のやる気がないと、なかなかスコアアップや英語の上達は難しいものです。それは研修の対象となっている社員はもちろんなのですが、それ以外の社員に対しても、自己啓発型で英語学習に取り組んでもらえるよう、全社的に英語の空気づくりをしていきたいと思っています。
その一環として、以前から継続しているのは、社内向けのメールマガジンの配信です。2週に一度、英会話と英文法に関する情報を盛り込んで、情報を発信しています。最初は研修対象の社員向けに送っていたところ、「せっかくだから全社展開したら」と上司に勧められて、もう3〜4年続けています。継続は大変ですが、メールを見てくれた社員から質問や英語研修に関する問い合わせが来ることもあり、発信し続けることの効果は感じています。
今後は、メールマガジンだけでなく他の手段も使いながら、英語に興味を持つきっかけの種まきを続けて、社内の英語力向上に貢献していきたいと思っています。