今回の「WHY ENGLISH」では、河合塾・広島校の講師である坂口雅彦さんにお話を伺いました。坂口さんは高校の英語教師として8年間勤務し、予備校講師に転身。その間に英検1級や通訳案内士国家試験に合格、TOEICはこれまでに64回受験、今までの最高スコアでは980点を獲得。2014年には『留学不要の英語勉強法』(ベレ出版)を、そして2017年には『やさしい英語で話がはずむ!外国人が喜ぶ日本のトピック108』(ベレ出版)を上梓されました。自分自身が真摯に英語学習に向き合うことで、生徒にも良い影響を与え続けている坂口さんに英語学習における挫折と継続の秘訣を伺いました。
英語を専門的に教えたいと、高校教師から塾講師へ
——— 塾講師になられるまでの経緯を教えてください。
教員採用試験に合格後、高校の教師を8年間務めました。この8年も大変充実していましたし、素晴らしい経験をすることができました。しかしながらある日、課外授業で予備校のWEB授業を見て衝撃を受けたのです。こんなに自由に英語を教えることができるのか、と。それから居ても立ってもいられず、英語に専念して教えたい思いに突き動かされて、塾講師への転職を決意しました。
——— 留学などはせずに英検1級やTOEIC980点というのは、すごいですね。先生になってから、テストを受けようと思ったのはどうしてですか。
自分の実力をもっと付けるためですね。勉強を進めるにあたり、資格試験を目標に設定したんです。英検準1級は3回落ちて4回目に合格、1級は5回落ちて6回目に合格しました。そのあと、通訳案内士の試験も合格しました。TOEICは今でも年2、3回受けていて、スコアは940点ぐらいです。
予備校でも、英検1級に5回落ちた話なども踏まえ、「留学なしでもここまでできるよ」と生徒たちに伝えています。留学できる環境とチャンスがあるならそれはとても良いことですが、留学をしなくても英語ができるようになるんだと知ってほしいんです。
失敗しても実力がついている自分を実感
——— 試験に何度も落ちると、モチベーションが下がってしまいそうですが…その点はどうだったのでしょう?
誰でも試験の合格は欲しいものですが、たとえ落ちても自分は英語力をつけるためにうまく試験を利用している、と考えればいいと思います。それに、勉強しているうちに力が付いてくるのが自分で分かれば、「力が付いている自分を褒めてやろう」という気持ちになってきます。英検1級は1万語ぐらい覚えないといけないので、作った単語カードの束が段ボール箱いっぱいになるぐらいまで勉強しました。そのうちに、英字新聞がどんどん読めるようになっていくんですね。
適当に勘で取った20点と、分かったうえで確信して取った20点では、表面上の点数は同じでも、実力は全然違うわけです。また正解が分かるのではなく、不正解である理由が分かるところまで学習を進めることも大切だと感じています。もちろん合格はしたかったですけれど、試験を受け続けるにつれ力が付いてきていると実感できたのはすごく楽しかったですね。
予備校でも、生徒たちにそういう話をします。生徒のなかには高校生や浪人生もいます。すべてさらけ出して、こんなに落ちた、こんなに失敗したという話をすることで勇気を与えられると思うんです。「もうこれ以上できないというぐらい何かをがんばった経験は、大きな力になる。もし後悔が残るとしたら、それは自分にできることを全部やりきらなかったから。これ以上もうできないというぐらいがんばったと言える自分になってほしい」と話しています。
レアジョブ英会話で「話す」力を維持
——— 英語力の維持方法や勉強を続けるコツを教えてください。
予備校の講師だと、英語を「聞く」「話す」機会があまりないんですね。学校だとネイティブの先生と定期的にコミュニケーションが取れるのですが、そういった機会もない。実は、通訳案内士を目指し始めてから初めて本格的にスピーキングに力を入れ始めたんです。6年前からレアジョブ英会話のレッスンを受けていて、最近は週に3回ぐらいのペースで続けています。そうやって定期的なアウトプットの機会を作ることは、総合的な英語力の維持にとっても大切です。
続けるコツは、「楽しい」という気持ちです。「もういやだな」と思うことがあっても、楽しかった瞬間を思い出して、自分を乗せることが秘訣です。その気持ちが強烈であればあるほど、またその楽しさを味わいたくなりますね。
——— 英語を学んでいてどんなときに楽しいと感じますか?
やっぱり外国人と意見交換ができた時です。相手の言っていることが聞き取れて、それに対する自分の意見が言えて――というのはかけがえのない楽しい時間ですね。
実は先日、外国人と話す際に会話がはずみそうなトピックを108集めて、中学生レベルのフレーズを紹介した、『やさしい英語で話がはずむ!外国人が喜ぶ日本のトピック108』(ベレ出版)という本を出しました。
例えばレアジョブ英会話の受講者の方であれば、この本のなかで自分の興味がある話題をひとつ選んで、レッスンのネタにしてもらってもいいと思います。極端に言うと、全部読む必要はないと思っています。レアジョブ英会話では先生が選べますから、たくさんの先生と、同じ話題を何度も話すんです。そうすることでその話題についての語彙が増えますし、「このトピックに関してなら話せる」という自信にもつながります。そこからまた別の話題に――とふくらませていくと、きっと楽しいですよ。
坂口さんの著書:
『やさしい英語で話がはずむ!外国人が喜ぶ日本のトピック108』(ベレ出版)
『留学不要の英語勉強法』(ベレ出版)
―――ありがとうございました。
英語を「読む」「書く」のみならず、「聞く」「話す」もできる予備校講師を目指しているという坂口さん。2020年度から、大学入試センター試験に代わって「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」が導入され、英語は4技能がまんべんなく求められるようになります。それに合わせて小学校から高校までの英語教育もますます変わってくることでしょう。そのとき、坂口さんがどのように活躍されるか、今からとても楽しみです。