2017.04.28

弱みの解消に拘らず、良さを強みに変えていく

日本の技術進化の歴史を支えてきたリーディングカンパニー

井内 猛さん (ニッタ・ハース株式会社
人事部長)
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大阪に本社を構える、日本とアメリカの合弁企業であるニッタ・ハース株式会社は、主に半導体の超精密研磨(CMP)用資材を世界に向けて販売しています。半導体の基板となるシリコンウェーハや各種電子部品などの生産拠点がほとんどアジアとなった今では、売上の海外比率が高まり、英語の重要性も増え続けている同社。しかし、決して強制的に英語研修を実施するのではなく、あくまで社員自らの取り組み(自己啓発)をベースに、英語研修への意識向上に取り組んでいます。その取組みの内容と想いについてうかがいました。

明治時代の紡績業から現代の携帯電話まで、日本の技術を支える

 

ニッタ・ハース株式会社は、東証一部上場のニッタ株式会社という日本の会社と、ロデール社(現:ダウ・ケミカル・カンパニー)というアメリカの会社の、ジョイントベンチャー(合弁企業)として、1983年に生まれました。ニッタは、富岡製糸工場などを中心に紡績業が日本の殖産興業を牽引していた明治時代、紡績設備の駆動に使う伝動用工業ベルトを初めて国産化した会社で、戦前・戦後にかけても、他にも自動車や電機製品など様々な生産現場で、日本のものづくり技術を支えてきました。そのニッタが100周年を迎えるタイミングで、新しいビジネスにチャレンジするために誕生した会社が、ニッタ・ハースです。

当社の事業は100%黒衣(黒子)の存在で、最終製品としては一般市場のどこにもでてきません。半導体の超精密研磨(CMP)用資材で国内トップシェアを持ち、日々新技術・新製品の開発に取り組み世界に向けて販売しています、と応募していただく学生さんに説明しても、正直なところ理解していただくのは難しいのが実状です。そこで研磨を分かりやすくお話しするのですが、少し身近なところでは、包丁などの刃物を研ぐとき、砥石を置いて水をかけながら研ぎますよね。その刃をなめらかにするための砥石(当社製品である研磨パッドにあたります)と水にあたるようなもの(同研磨スラリー)を作っているのが我々の会社です。90年代初頭、肩掛けショルダータイプだった携帯電話が、今やスマートフォンやウェアラブルウォッチに、コンパクトかつ高機能に進化しています。また、4Kテレビが家庭用に販売されたり、高解像度のカメラが携帯電話に組み込まれたり、自動車もハイブリッドカーや電気自動車が実用化され安全機構も装備されるなど、様々な製品の機能がめざましく向上していますが、すべてそれを司る電子部品(半導体)が日々進化しているからできること。研磨技術のレベルがどんどん上がり、電子部品の進化(高機能化)によってデジタル社会が拡大・発展していくことは、当社が世の中に貢献できている証でもあります。

外資、しかし英語ができなくても仕事はできた

アメリカと日本の合弁企業なので、設立当初の技術導入や親会社との交流は英語によるコミュニケーションが必須でした。とはいえ、ニッタ・ハースの拠点は日本であったため、当時の社員のほとんどが日本人でした。もちろん親会社との電話会議や技術交流も頻繁にありましたが、その頃は英語が元々堪能な限られた社員が中心となって、それらの業務を担当していました。つまり、英語ができなくても他の仕事はできる環境があったのです。しかし、現在はシリコンウェーハや電子部品などの生産拠点はほとんどがアジアで、我々のお客様がそこにいらっしゃいます。また、グローバル市場で戦っていくには、米国のダウ・ケミカル・カンパニーともっとコラボレーションして事業を発展させていく必要があります。今でも英語ができなくても仕事はできるかもしれないですが、“英語ができたらもっといい仕事ができる”でしょうし、当社の社員として“もっとデジタル社会の発展に貢献したい”という想いがあるのであれば、英語はツールでしかないとはいえ、そのツールを使えないと仕事の幅は広がらない時代になってきているのです。

弱みの解消に拘るではなく、良さを強みに変えていく人材育成

英語によるコミュニケーションができる人材を増やしていかないといけない、という考えは会社創業以来からありました。これは“弱みを解消していく”という問題意識からというより、会社や人材の“良さを強みに変える”ためにどうすればいいかと考えた結果、生まれたものです。たとえば、私の長男が受験生の時、数学と理科はめっぽう強いが国語は苦手という状況に対して、国語の成績についてはあえて一切触れず、「数学と理科を100点目指そう!」と励ますんです。すると、何カ月かすると数学と理科を本気で頑張って100点を取ってくる。しかし、学習量が偏ることで徐々に国語の点は落ちてきて、今まで取れていた点数さえも取れなくなる。そうなると「次のテストは国語を頑張ろう」と思うのが普通だと思います。その時に大切なのは“点数が良くなった数学と理科は手を抜かず、もっと強くしていく”、そのように考えてくれるように励まします。この土壌(考え方)がうちの会社にはあるはず、と思っています。もし、息子が国語の点数を上げていくために自分でどうすればいいか分からない…という時には、積極的に問題集や新たな勉強法を渡していけばいい。でも500円ですってお金を取る必要はないですよね(笑)。当社の英語研修も同じで、必要な方法・手段は会社が用意します。

研修はやりたい人が受ける・・・のがベスト

会社として英語の重要性は高まってきているものの、職種によってその差はあります。営業部門や技術開発部門に比べて管理部門の一部や生産部門では、やはり英語を使う機会は少ないです。しかし、当社の英語研修の対象は特に限定することはなく、手を挙げた人が新入社員でも管理職でも、総務でも営業でも、誰でも受けることができる仕組みです。

もちろん会社として売上に繋がることに費用をかけるという考えは大前提としてあるのですが、そもそもまずは意識の底上げが重要だと思っています。「仕事で必要だから勉強しなさい」では「受験に必要だから勉強しなさい」と言うのと一緒です。受験で合格することも、英語を話せるようになることも、それはゲートの一つにしかすぎません。努力する意思がある社員を、会社は全力でサポートする。すると今までほとんど話せなかった社員が、英語を話せるようになってくると、その社員に対して周りから称賛と尊敬の念が生まれてくる。モチベーションは与えられるものではないですし、自ら生み出すものだと思います。

聞く読むだけではだめ、話す場を増やすことが必要

ニッタ・ハースでは、春と秋にTOEICテストを社内で実施し、2016年からは600点を管理職の目標スコアに設定しました。しかし、スコアを上げる事が最終目的ではないですし、英語をコミュニケーションツールとして活用するためには、聞くだけでも読めるだけでもだめで、やはり“話す度胸”が大切だと考えています。以前にも増して経営陣の英語への関心が高まる中で、全社的に英語会話力の向上に力を入れることを決めました。今までも通信講座などを取り入れたことはありましたが、会話力向上にはまず場を作ることが大事、もっと言うと話す回数が大事です。しかし、それにはそれなりのコスト(投資)が必要になるのですが、オンライン英会話はコストパフォーマンスが高いと考え、2016年4月より『レアジョブ英会話』を導入しました。

前述の通り、誰でも研修への参加は認めますが、申し込んだ全ての社員の費用を、無条件に全額を会社が負担するのではなく、半年間で50回受講という必達目標をあえて設定しました。この目標を達成すれば、全額会社が負担するし、そうでなければ全額自己負担です。ここまでの話しと矛盾するかもしれませんが、この50回は週に2回(30分程度/回)というペースであること、英語を“話す場を増やしていく”という目的達成の最低限ラインとして設けました。結果としては、第一回は35名が受講しましたが、その内32名が必達目標をクリアし、平均の受講回数は62回、中には最大124回受講した社員もいたほど、積極的に受講する結果となりました。成果としても、受講者の8割以上の社員が“話す場が増えた”と効果を感じてくれました。また、これは当初想定していなかったのですが、TOEICスコアで『レアジョブ英会話』の受講前後で比較すると、平均で50点ほど上がるという副次的な効果も生まれました。

流暢でなくてもいい、社員みんなが自ら発信できる社風を醸成

受講を促進させるためには、制度など仕組みから促すことはもちろんですが、一番重要なのは、受講者のモチベーション(受講意欲)をいかに継続できるか?だと考えています。誰しも受講申し込みの時点では、よし!頑張ろう!と思っているはずです。しかし、時間が経つと徐々に・・・。これをタイムリーに初心に戻してくれるのは“人による働きかけ”だと思います。その点では、当社では研修の担当者が積極的に社内で声掛けをし、受講者の上司へ進捗状況をこまめにフィードバックしたり、担当者自身が誰よりもレッスンを受講して、その感想を広めたりと、担当者が社内で様々な形で働きかけをしてくれました。また、今回の英語研修はあくまで自己啓発をベースで行っているので、「なんで英語を勉強しないんだ!」「仕事で必要だからやりなさい!」と強制するものではありません。極端な話、ご飯を食べるときに今までフォークしか使えなかった子どもに「お箸ってこう使うんだよ、こうやって食べるんだよ」と教えますよね。そこを「なんでお箸を使わないんだ!」とは言わないはずです。「お箸ってこうやって持ったら便利だし、ごはん食べるのが楽しくなるよね」と話をしていきながら、そのうち使えるようになってくる。もはや箸をいつ使えるようになったか分からないほど、自然の流れで私たちは使っていますが、英語も箸と同じで所詮ツールです。

流暢に話せなくても、まずは話す度胸を身につけよう、まずは伝える努力をすればいい。お客様に、ダウの人たちに、自分の伝えたいことを、流暢な英語で通訳の人に伝えてもらうよりも、「僕はこの製品をつくるラインのチーフをしています。この製品の魅力は○○○なんです!」と、その製品の生産担当者本人が、拙い英語でも直接伝えた方が、よっぽど想いが伝わるのではないでしょうか。そのような風土を醸成して、日本語でも英語でも“自社の魅力を社員みんなが自分で発信できるような会社”にしていきたいと考えています。そのために、これからも『レアジョブ英会話』を継続して活用したいです。そして、社内で自然と英語によるコミュニケーションの楽しさ・面白さが広がれば、まさに“良さを強みに変えていく”ことが、ニッタ・ハースにおいて実現できたといえます。そうなれば、導入にあたって、様々な努力を積み重ねてくれた研修担当者の想いも叶うことになりますね。

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